ポケスペSV編第10話を読んで(イチバン24年8月号)
この記事には執筆時点(24/06/28)での、コミックス通巻版および、先行版未収録の内容を含みます。
【スター団って"カッコいい"かも】
ポケットモンスターSPECIALスカーレット・バイオレット編第10話の感想です。今回の記事、いつにも増して長いのでお気をつけくだされ。
今月号のお話はバイオレット王子とペパーの冒険がメインでしたね!ふたりの活躍は私がうだうだ書くよりも読んでみるほうがいいに決まっているので、それとは別の気になったところの感想を書いてみるつもりです。
ところで、今回の感想記事には【スター団って"カッコいい"かも】という副題をつけてみました。「あれ?今回ってそんな話だっけ?」とお思いになるかもしれませんが、よろしければお付き合いくださいね。
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今回のお話で王子・ペパーの冒険に加えてもうひとつ大きな出来事だったのが、スター団のボス、ピーニャの再登場でした。ペパーとピーニャが会話するという、ゲームにはなかった展開にワクワク!
ペパーはこの一連の会話の後に、ピーニャのことを「まじめなヤツ」と評します。どうしてそんな人が、迷惑千万なスター団のボスをやっていたのだろうと疑問に思ったようです。
ピーニャが「まじめなヤツ」だというのは私もしっくりくるのですが、そのしっくり具合がどこから来るのかがすぐにぴんと来なくて。今回の感想記事は、そこから考えたことがテーマです。
ペパーの言う「まじめ」について。この「まじめ」とは、チーム・セギンで触れたピーニャの人柄、つまり義理堅さ、筋を通す性格のことだったり、今話で見せたような、チームを壊滅させた"にっくき"自分たちにさえも、コトが済んだなら手伝いをしてくれる律儀さも含んだ「まじめ」で、きっといいですよね。ピーニャに対してよく使われている「面倒見が良い」という言葉も、この範疇だと思います。
また、今の時点ではペパーはスター団結成のいきさつ*1を知らないので、スター団の印象とピーニャから受ける印象は違っているという意味でも、「まじめなヤツ」という表現を使ったようにも感じます。ペパーの言う「まじめ」とは、このような感じでしょうか。
一方でスター団に対する世間の印象は、「軽薄」「迷惑」といったものだと思います。確かにこれと対比すると、これまで見てきたピーニャの人柄は真逆といえますし、だからこそどうして「まじめ」な人がボスなのか、もしくはどうしてボスが「まじめ」なのに、団としては軽薄で迷惑な集団になるのでしょう。
この違いに対する手がかりになるのは、今話でピーニャがスター団を自分たちの手に負えなくなっていたのだ、と言ったことでしょう。ここでいう手に負えなさとは、繰り返される迷惑行為に代表されるような暴走のことを指しているのだと思います。
当然ながらスター団結成の目的は、今起きているような迷惑行為をすることではなかったはずです。また、人が集まった結果として、望まぬ方向に向かってしまうことは珍しい話でもないでしょう。ただ私が気になったのは、どうして「まじめ」なスター団に、「軽薄で迷惑な」人たちも集まってきたのかというところでした。
で、いろいろ考えてみたのですが、どうも私に盲点があったせいでぴんと来なかったような気がしてきました。おそらく物語の多くはないけれど、決して少なすぎることはない人たちにとって、スター団って"カッコいい"かもという気持ちがあるのでは、と思えてきたんです。だから、人が集まってくる。
そう考えると、ピーニャの言う手に負えなさとは、迷惑行為のような暴走も当然含まれますがそれだけにとどまらない、スター団が帯びてしまった勢いや影響力のことを言っているんじゃないかな、と思うんです。
そして、この意図せず帯びた力は人を惹きつける、もしくは眉をひそめられる性質のものですから、私はそれを括弧付きでの"カッコよさ"と表現することにします。
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(私もそうだったんですが)多くの生徒や教師たちにとっては「軽薄」で「迷惑」な不良生徒の集まりにすぎないスター団ですが、それだけとは考えない人もきっといて。たとえば、ゲームではチーム・ルクバーのアジト近辺にいるNPCの、かいじゅうマニアのヨリヒロはスター団を好ましく思っているようです。話しかけるとこのトレーナーは、「スター団
残念ながら、話をよく聞いてみてもポケモンバトルの実力に関する興味が中心で、どうしてスター団に入団したいのかは語ってくれませんが、スター団の活動を
加えて言えば、かいじゅうマニアというアカデミーの生徒ではない人物が、スター団への憧れを語るというのも見過ごせないところです。あんなに大きなアジトをいくつも構えているので当然といえば当然なのですが、スター団がどんな集団なのか、学外にまで噂が広がっているのでしょう。
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「スター団って"カッコいい"かも」。ポケスペでも、この雰囲気は表現されていると思います。
その"カッコよさ"がどのように表現されているかというと、3話でのスター団勧誘シーンに見つけることができるでしょう。スカウト団員たちは、ずばりスター団に入る魅力をこのように語っています。以下、引用してみます。
わかる!言いたいこともはっきり言えない気弱で陰キャなきみこそ、
スター団にふさわしい!
出典:日下秀憲・山本サトシ (2024) ポケットモンスターSPECIAL スカーレット・バイオレット 1 p.75
(該当のシーンはp.19)
調子のいい、そして強引な勧誘のための売り文句*2というところは割り引いて見る必要はあっても、現状のスター団に対するいい線を突いています。
先輩曰く、うまく自己主張できない人こそがスター団にふさわしいとのことなので、そこから翻って言えば、スター団に入れば主張ができる、言いたいことが言えるようになる、ということでしょう。そうすれば、ナメられずにすむのだと。先輩はスター団の"カッコよさ"をそのように訴えているのだと思います。
ではこれが、先輩があっさりボタンに矛盾を指摘されてショックを受けていたように(ボタンが何枚も上手!)、有名無実なものかというと必ずしもその限りではなくて。作中ではスター団が実際に主張を通してしまったシーンがあります。
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なんとポケスペのスター団は教師たちを団ラッシュに挑戦させて、結果追い返すという暴挙を達成してしまいました(4話)。カ・ゲ・キですね!
ここにどんな"カッコよさ"があったかというと、生徒たち(スター団)が自分たちより立場の強い交渉相手(教師)を、自分たち主導の交渉の席(団ラッシュ)に着かせたことだと思うんです*3。追い返したこと自体は小さくない結果とはいえおまけに過ぎず、メインの成果は自分たち主導を貫いたところでしょう。
だから、先輩スカウトの言っていた"言いたいこともはっきり言えない〜"という売り文句は、アカデミー側と渡り合ったスター団の現状・勢力をよく捉えていたりして。ナメられまくりでしたが彼、実はけっこうスルドいやつだったのでは。…
しかし、このスター団の"カッコよさ"が何をもたらすかというと、ひとつはアカデミーとの緊張関係でしょう。スター団にアカデミーから「要望*4」が突きつけられた時点で、双方の衝突はおそらく不可避だったとはいえ、アカデミー側からすれば教師を追い返されることの衝撃は小さくないんじゃないかなあ。
もしそうなら、王子とペパーが、きっと二人とも意図はしていなかったけど、どちらの立場でもない場所からカチコミを成功させて、事態をいったん軟着陸させたのはファインプレーだったと思うのです。しかも、舞台は偶然にも現場となったチーム・セギンだったのですから。当の王子がその結果には興味なさそうなのもおもしろい。
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とはいえ既に書いた通り、この"カッコよさ"はマジボスを待つという、今のボスたちの目的でもありませんし、ましてやスター団結成の主目的ではありません。もしかしたら、ボスたちもスター団として活動していくなかで気づいていったような、培われていったものかもしれません。
ですが、偶然持ち合わせていったものだったとしても、この"カッコよさ"に惹かれる人や、むしろこの"カッコよさ"こそをスター団だと捉える人は多いのでは、と思うんです。
アジトを構えたり、団ラッシュという大規模な形式のバトルを行えるといった、大きな力をスター団が持っているのは、人が集まっているからです…ってそれは当然のことですね。
ではどうして人が集まるかというと、スター団はきっとそれなりにいたであろう、居心地の悪い生徒たちの受け皿になれるだけの器があったからだと思います。くだけて言えば、"カッコいい"からです。そして、そうやって人が集まっていくと、また"カッコよく"見えていくことでしょう。
注目したいのは、ゲーム・ポケスペのどちらでも、スター団を通して人の集まるいい面、いや〜な面が表現されていることです。まず、いや〜な面としてはくだんの勧誘活動が挙げられるでしょう(ノルマ制だったりと、自発的な感じがないもんね)。あのような強引な勧誘で人がたくさん増えるとは思えず、あの活動はむしろ既存団員の忠誠心を試すようなものです。いやだいやだ。
他方、人が集まるいい面、穏やかな面と言い換えてもいいと思うけれど、確かにスター団を居場所に感じる人たちもいるんです。ゲームではしるしの木立にいるスター団のはぐれ者たちがそれですし、ポケスペではマジボスのおかげで救われた団員がいるという、ピーニャの台詞がそれでしょう。
ピーニャの言った「手に負えなさ」というのは、(こちらがほとんどだと思うけれど)数々の迷惑・暴走行為だけではなく、微妙な・繊細なバランスの上でも守らなきゃいけないものがあるという、この両面を指しているようにも思うのです。
以上、ポケスペではスター団の"カッコよさ"が、こんな感じで表れているかな?というお話でした。これでようやくピーニャの話に戻ることにします。
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ここまで延々と書いてきたのは、ピーニャの「まじめ」さを考える上で、特に現状のスター団がどんな集団かを改めて考えてみたいと思ったからです。
私なりの結論としては、スター団とは"カッコいい"、つまりノッている集団だ、ということになります。ポケスペでは団ラッシュに挑んだ教師を追い返すという出来事を通して、スター団の勢い・影響力を表現しているように感じました。
そしてその"カッコいい"かも?という雰囲気は人を集めて、その結果として一方では居場所が生まれたり、また他方では強引な勧誘活動といった混乱が生まれるような狂騒が起きている、というのがスター団の現状だと思うんです。
これを踏まえて、最後はピーニャの「まじめ」さについて。ピーニャがまじめというのは、ペパーの言うようにほんとうにその通り。ピーニャはとにかく真っ正面からやってみる人、なんだと思うんです。
とはいえ現状の、抗うことにかけては随一でも、その面が行きすぎているスター団の舵取りはピーニャや他のボスたちでなくたって、誰にとっても難しい…難しすぎです!だから今話での、そこから解放されて「無責任なようだけど」ホッとしてるという実感につながっていくわけで。
(マジボスを待つという事情があるとはいえ)ピーニャがこの難題とどのように取っ組み合っていたかというと、これまた真っ正面からやってみたんだと思います。テッテー的に"悪の組織のボスを演じる"というか。他にも、不得手なポケモンバトルもなんとか工夫していましたものね。でも得意なことで補う、というのはとってもポジティブです。
ただむべなるかな、ピーニャのそういうまじめで切れ者らしいセンスって、団員たちにもあんまり理解されていないような…。たとえば残念ながらピーニャの「演出」は、したっぱたちにはウケが悪かったという(5話、1巻p.117)。ここでも「まじめ」と「軽薄」の壁が。ただ、こういうすれ違いが描かれているのは面白い〜!
そろそろまとめましょう。ここまで、ピーニャはスター団の置かれた難しい状況の中で、いたって「まじめ」なやり方で奮闘していた、というように考えてみました。どの程度まで意図的かはさておき、ポケスペのスター団およびピーニャの描写はそこにフォーカスしているようにも思えます。
ですが、これがスター団のすべてではないでしょう。まだまだ面白いものを今後の展開で見せてくれることを期待して、締めとすることにします。
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今回はペパーのピーニャは「まじめなヤツ」という台詞からいろいろと。きっと不意にこぼした言葉だったけれど、妙に的を射たピーニャ評に思えたので、何だかだらだらと書き連ねてしまいました。まとめるって難しい。
お付き合いいただいた方、ありがとうございます。ほんとうにお疲れさまでした。
なお、ピーニャの話題というより、スター団の話題に。10話の感想というより、3〜5話の感想になってしまった感もあるけれど、3〜5話はちょうど感想記事を書けなかったので、割合が多くなってしまったのはお許しくださいませ。それでは、またいつか。
↓前話の感想はこちら